「国民による国民のための医療の実現」の支援を目的とし、国民がインターネット上で見つけやすい医療情報メディア

第四章 それぞれの不整脈の特徴 WPW症候群

WPW症候群は「ウォルフ、パーキンソン、ホワイト」の3人が特殊なQRS波の形をした頻拍症の患者を報告し、そのイニシャルが病名となっている。

症状

1930年にウォルフ、パーキンソン、ホワイトの3人が特殊なQRS波の形をした頻拍症の患者を報告したことで、それぞれの名前の頭文字からWPW症候群という名前がつけられました。WPW症候群は、一般的に1000人に1~2人は先天的に持っていると考えられています。

心房から心室へ電気的な興奮を伝える伝導路は、房室結節からヒス束へという1本の路で続きます。しかしWPW症候群は、それ以外に心房と心室をつなぐバイパス(副伝導路とよぶ)を持つため、頻拍発作を起こしてくるのです。

この副伝導路の存在する場所によって、それぞれ名前がついていますが、ほとんどは「ケント束」です。これは、心房と心室を直接つなぐ副伝導路です。ほかに、房室結節だけをバイパスする副伝導路や、房室結節ないしヒス束と心室をバイパスする副伝導路があります。

WPW症候群は、従来、頻拍発作を起こしても、生命にかかわることはない、予後のよい不整脈と考えられてきましたが、1980年代になると、心房細動から心室細動に移行して突然死を起こすことが明らかにされ、こわい不整脈として改めて注目を集めました。

いいかえると、WPW症候群では発作性上室性頻拍と心房細動という2種類の不整脈が問題となります。

◆発作性上室性頻拍
このように副伝導路があるため、心房と心室の間を、副伝導路と房室結節を通して、命令(電気的興奮)がグルグルと旋回(リエントリー)するという、特殊な発作性上室性頻拍を起こします。これを房室リエントリー性頻拍とよびます。

興奮の旋回のほとんどは、房室結節を心房から心室へ通り、ケント束を心室から心房に戻るもので、これを正方向性頻拍とよばれます。まれに、この逆で、ケント束を上から下へ通って、房室結節を下から上に通る反方向性頻拍もあります。強い動悸、胸苦しさ、胸痛、血圧低下によるめまい、失神発作などのアダムス・ストークス発作を起こします。

◆発作性心房細動
WPW症候群が、心房細動を合併することが少なくないことがわかってきました。その症状は、発作性心房細動と同じです。そのなかで、副伝導路の通りが非常によい場合には、ごくまれに心室細動に移行して突然死を起こすことがある、ということが明らかにされてきました。これらは「ハイリスクグループ」とよばれています。

治療

治療法としては、発作性上室性頻拍(房室リエントリー性頻拍)と心房細動では大きく異なります。それぞれの治療の原則は、発作性上室性頻拍と心房細動と同じです。WPW症候群の場合の、治療の特殊性について説明しましょう。

◆迷走神経刺激法
発作性上室性頻拍は、興奮が旋回する一方が副伝導路であっても、片方は房室結節ですから、迷走神経を刺激する(眼球圧迫、息を止める、指をのどに入れて嘔吐するなど)と、房室結節を抑えて発作を止めることができます。しかし、心房細動には無効です。

◆薬物療法
*発作性上室性頻拍に対して、房室結節の伝導を抑え、頻拍を止める薬剤。
ATP、ワソラン(Ⅳ群薬)などの静脈注射。心房細動には無効です。
*発作性上室性頻拍に対して、副伝導路の伝導を抑え、頻拍を止める薬剤。
アミサリン、リスモダン(Ⅰ群薬)などの静脈注射。心房細動では、心拍数をコントロールし、心房細動を止めることも可能です。

◆カテーテルアブレーション
WPW症候群に対して、カテーテルアブレーションはもっともよい適応であり、その成功率は90%以上となっています。これにより発作性上室性頻拍は完全に起こらなくなります。心房細動には無効ですが、心房細動が起こっても、心室細動に移行することはなくなります。

合併症として、心室に穴があき(穿孔)、心臓をとりまく心嚢(しんのう)に血液がたまり、心臓の動きが制限され(タンポナーデ)、ショックになるなど重篤なものもありますから、十分な説明を受ける必要があります。ただ、最近では、合併症も1%以下で、安全性は高くなっています。

心電図

ケント束は、心房と心室を直接に連絡する副伝導路です。興奮が副伝導路を介して心房から心室筋へ早い速度で伝わるため、幅の広いQRS波(デルタ波形をともなうため)と、PR間隔が短いという特徴的な心電図の波形をあらわします。これは「顕在性WPW症候群」とよばれます。

ところが、興奮が下から上へ(心室から心房へ=逆伝導)のみ伝導する「潜在性WPW症候群」があります。

この場合、心電図にはデルタ波形は出現しません。また、PR間隔の短縮も認められません。ときおり興奮が上から下へ伝導する場合を「間欠性WPW症候群」とよびます。

いずれにしても心房と心室を伝導する路は、房室結節と副伝導路の2本になります。したがって期外収縮を引き金にして、興奮は副伝導路を心室から心房へ(下から上へ)、房室結節を心房から心室へ(上から下へ)伝導し、グルグル旋回し、上室性頻拍になります。まれに逆まわりすることもあります。

上室性頻拍発作を起こしたときの心電図では、幅のせまい正常なQRS波を示すため、WPW症候群かどうかは確定できません。その場合は、電気生理学的検査で診断を確定します。

心房細動のときの心電図は、ケント束のある場合ではデルタ波のあるQRS波形を示し、脈拍が1分間に100回以上になるので、一見心室頻拍のようにみえます。(犠牲心室頻拍とよぶ)。そのQRS波形の間隔が非常に短い場合を、ハイリスクグループとよんでいます。

著者の紹介会社概要お問い合わせ
ページトップへ