前項で取り上げた心房細動は、「心房のなかで小さな興奮の旋回が不規則に多数同時に起こること」と定義できますが、心房粗動では興奮の旋回する路は1つだけです。ですから、心房粗動は規則正しく拍動します。
しかし、1分間に240~360回の興奮の旋回が持続するため、症状としてはかなり強くなります。
房室結節の通りがよいときは、脈拍が1対1ないし2対1で心室に伝わると、1分間120~240回と脈が速くなるため、血圧が急に低下して、動悸、胸苦しさだけではなく、目の前が暗くなったり、失神発作や心不全を起こすこともあります。
心房粗動の治療法は、原則として心房細動と同じと考えてよいでしょう。しかし心房粗動は心房細動にくらべ、薬による停止も予防も、心室のレートコントロールは難しいのが特徴です。
治療としては、まず抗不整脈薬で心房粗動の予防、または発作を止めます。次に、ベーター遮断薬で心拍数のコントロールを行います。それでも効果がないときは、体外式電気的除細動器で電気ショックによる治療が行われます。
心房粗動では、心房細動と異なる特殊な治療法として、次の2つの治療法があります。
①抗頻拍ペーシング
これは、食堂に電極カテーテルを入れて電気的刺激を与える「食道ペーシング」や、心房に電極カテーテルを入れて電気的刺激を与える「心房ペーシング」によって、心房粗動を止めるものです。
②カテーテルアブレーション
最近は、カテーテルアブレーションで心房粗動を完全に治すことが可能になっています。普通のタイプ(通常型)では、右心房の三尖弁(さんせんべん)と下大静脈の間を、高周波のカテーテルアブレーションで焼き切ると根治します。
この成功率は90%以上と高く、合併症も少なく、比較的安全な根治療法として確率しています。しかし、他のタイプの心房粗動では成功率が必ずしも高くなく、3次元マッピングシステムを駆使して治療を行っています。