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第四章 それぞれの不整脈の特徴 心房細動

心房細動は、精神的および肉体的ストレス、寝不足、不規則な生活、飲酒、喫煙、カフェインのとりすぎ等で起こるもの。

心房細動とは、どのような不整脈なのでしょうか。かんたんに説明しましょう。

心房の果たす役割を考えてみましょう。心臓は収縮をくり返して、心室から全身に血液を送り出すポンプの機能を持っていますが、心房は心室に血液を送り出す大切な補助ポンプの機能を持っています。

心房細動は、心房のたくさんの部位で興奮が旋回し、けいれん状態になり、心房の規則的な収縮が失われ、1分間に350~450回の電気的な興奮が起こります。

しかし、350~450回の電気的な興奮は房室結節でコントロールされ、心室には50~150回の興奮として伝わります。ですから心室細動のように致死的な不整脈にはなりませんが、心拍は規則的ではなく、まったくイレギュラーです。そのため「絶対性不整脈」とよばれています。

症状

心拍数はつねに不安定で、頻脈になったり、徐脈になったりします。心拍数が1分間に50~100回のときには自覚症状がない場合が多いのですが、140回以上になると動悸や胸苦しさなどを訴えます。

このように心房細動は、突然死に直接つながる心室細動と違って、それ自体致死的な不整脈ではありません。しかし、いま世界の専門医にとって、たいへん注目されている不整脈のひとつです。

◆心房細動が注目されている理由

では、なぜ、心房細動が注目されているのでしょうか。それは次の5点に集約されます。

①発生頻度が高い
心房細動は、年齢が高くなるにつれて発症する割合が高くなります。全人口比で1000人に5人といわれ、各年代の人口比でいえば、以下のようになります。
60歳代 約2%
70歳代 約4%
80歳代 約6%
この比率をみると、私たち医師にとっては、日常の診療でよく遭遇する不整脈であるといえますし、また、高齢化社会では増えていくということがわかります。

②血栓ができやすい
心房がけいれん状態になると、心房が動かない状態になりますから、血流が乱れ、血液が停滞します。すると、心房の壁に血栓ができやすくなります。一般に48時間以上、心房細動が続くと血栓ができると考えられています。左心房にできた血栓がはがれた場合には、それが脳などの血管に詰まり、脳塞栓など動脈性の塞栓症を発症します。また、右心房にできた血栓がはがれた場合は、肺の塞栓症を起こします。過去に脳梗塞(一過性脳虚血発作を含む)を起こした人、高血圧や糖尿病、心不全のある人、高齢者(75歳以上)は血栓塞栓症の危険性があるといわれています。このような特徴を持つ心房細動を、どのように治療すればよいかということが、いま世界中の心臓医の大きな関心事になっています。

③致死的ではないが症状が重い
心房細動の場合、脈拍は不規則になり、1分間に140回を超えるくらい脈拍が速くなります。そうすると、動悸や胸苦しさを訴えQOLの低下をきたします。

④予防することがむずかしい
心房細動の発生には、精神的、肉体的ストレスなどの関与が深いために、抗不整脈薬で完全に予防することはむずかしく、発作への不安が強くなります。

⑤合併疾患によっては、ごくまれに致死的になりうる
また、もともと心臓の機能が悪い人や、基礎心疾患がある人は、心不全を起こすこともあります。また、もともと冠動脈疾患のある人は狭心症発作を起こしたり、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症(とくに閉塞性肥大型心筋症)、WPW症候群などではアダムス・ストークス症候群のような失神発作を起こして突然死につながることさえあります。

原因

以前は、僧帽弁狭窄症(そうぼうべん きょうさくしょう)などの弁膜症による心房細動が中心でしたが、現在はそれ以外の冠動脈疾患、高血圧性心疾患などの心臓の病気によるものが多くなっています。心臓の病気以外では、甲状腺機能亢進症も原因になります。

また、基礎疾患がない人にもみられることがあります。これを孤立性心房細動とよびます。

精神的および肉体的ストレス、寝不足、不規則な生活、飲酒、喫煙、カフェインのとりすぎなどが、誘因となったり、症状を悪化させたりします。

治療

心房細動は、持続時間によって「発作性心房細動」と「持続性心房細動」に分けられ、それによって治療法も変わってきます。この定義は必ずしも確定しているわけではなく、医師によって解釈の違いがあり、次のような定義もあります。
発作性心房細動/発症後7日以内に発作が自然停止するもの。
持続性心房細動/心房細動が発症後7日を超えて持続しているもの、自然停止しないが薬や電気ショックで停止するもの。
永続性心房細動/心房細動に固定してしまったもの。
発作性あるいは持続性心房細動の治療法は次の通りです。

①ライフスタイルの改善
精神的および肉体的ストレスを取り除く、過労を避ける、飲酒、喫煙、カフェインのとりすぎを避けるなど、その人によって心房細動の誘因となるストレッサーを見つけ出し、それを避けることが重要です。ストレスが大きく関連している場合は「精神安定剤」が考えられるでしょう。

②薬物療法
心房細動に対する薬の使い方には、次の2点があります。
*発作を止めるため、また予防するための抗不整脈薬。
発作を止めるには、ピルシカイニドなどのⅠ群の薬がおもに使われます。
症状を伴う発作を繰り返す場合は予防治療を行います。孤立性心房細動の場合はピルシカイニド、シベンゾリン、プロパフェノン、ジソピラミド、フレカイニドなどⅠ群薬が用いられます。持続性になるとべプリジルが用いられることもあります。一方、基礎心疾患がある人はアミオダロンなどⅢ群薬が使われます。
*心拍数をコントロールするための薬
心房細動は止めなくても、房室結節を抑えれば、心室のレート(心拍の速さ)をコントロールすることができるので、頻脈にならず、動悸も抑えられ、心不全なども予防できます。そのための薬としてベータ―遮断薬やベラパミル、ジゴキシンを使用します。

③薬物療法で止まらない場合や血圧低下をきたすなど状態の悪い場合
体外式の電気式除細動器で、電気ショックをかけることで、正常洞調律(書籍13p)に戻します。この場合、激痛をともないますから、静脈麻酔をかける必要があります。

また、電気的除細動をかけると、脳塞栓などの合併症が出ることもありますから、血栓室栓への対策を行ったうえできちんと専門医のいる病院でかけなければなりません。医師からの十分な説明とともに、本人の同意が必要になります。

薬を投与したり、電気ショックをかけたりして、発作的心房細動が止まったとしても、正常の調律に維持することが必要です。

1年に1~2回の発作の場合や、その後のライフスタイルの改善や抗不整脈薬で心房細動が予防できる場合はよいのですが、抗不整脈薬で十分予防できないことが多いのです。そうすると、発作がいつ起こるかという不安はとれません。

また、発作が起こった直後は頻脈になりやすく、動悸が強くなることが多いものです。広場恐怖症などの神経症になり、その専門的な治療が必要になることさえあります。さらには、抗不整脈薬の副作用も起こり得ます。そのため、心房細動のままで、心拍数をコントロールしようとする考え方があります。

どちらを選択しても生命予後や脳便室、心不全の発症には差がないことが大規模試験から実証されています。
いずれにしても、発作が頻発する場合には、医師から十分な説明を受け、よく相談することが必要です。

◆心房細動と血栓

心房細動が起こったとき、なぜ血栓ができやすいのかを考えてみましょう。

血栓ができるメカニズムは、完全に解明されてはいませんが、おおむね次のように考えられています。

  • ①心房細動になると、心房の中の血流が乱れ、血液が停滞するため。
  • ②血小板(けっしょうばん/血液を固まりやすくする作用がある)の活性が高くなるため。
  • ③心房細動では心房から「心房性ナトリウム利尿ペプチド」というホルモンが分泌され、脱水傾向になりやすく、血液の濃度が高くなるため。


◆血栓を予防する薬

では、血栓ができやすい基礎心疾患にはどのようなものがあるでしょうか。

第一に、僧帽弁狭窄症があげられます。また、冠動脈疾患や高血圧性心疾患や拡張型心筋症、とくに心臓の機能が低下しているときには血栓が起こりやすくなります。

基礎心疾患のない孤立型心房細動の場合は、血栓ができにくいのですが、高血圧や糖尿病など動脈硬化性疾患を持っていたり、年齢が高くなると血栓はできやすくなります。

現在ではCHADS2(チャズツー)スコアといって脳検塞(一過性脳虚血発作を含む)の既往(2点)、高血圧(1点)、糖尿病(1点)、心不全(1点)、高齢(75歳以上)(1点)を加算して2点以上は血栓予防治療の適応、1点以上はその治療を考慮することが一般的です。

血栓をできにくくする薬として、もっとも強力なものとしては「ワルファリン」があります。この薬は血液が固まらないようにする抗凝固薬です。

このワルファリンは、血液中のある量までいかないと効果がありません。
逆に、その量を超えると、出血が止まらなくなります。また、ワルファリンの作用は、食物によって抑制されたり、風邪薬などのよって作用が強くなったりします。

したがって、ワルファリンを使用するときには、かならず定期的に血液検査(プロトロンビン時間)を行い、その使用量が適切であるかどうかを調べながら使わなければなりません。

近年、新しい抗凝固薬として直接トロンビン阻害薬「ダビガトラン」(プラザキサ)やxa因子阻害薬「リバーロキサバン(イグザレルト)」「アピキサバン(エリキュース)」などが非弁膜症性心房細動に対し使用できるようになりました。ワルファリンと違い、食事や他の薬との相互作用が少なく、細かい血液モニタリングも必要でないため、菅政が楽になりました。しかし、肝臓の悪い人やあまり高齢な人では副作用(出血)が増えるともいわれています。

最近では、心エコー図で心房の大きさ、心機能、血栓の有無を知ることができます。また、特殊な血液検査で血栓のなりやすさを調べる研究もされています。

患者さんは、血栓予防の薬が必要かどうか、どの薬を使用するかについては、医師の説明を十分に受ける必要があります。

◆永続性心房細動のときに使用する薬
永続性心房細動では、心房細動を止めるための抗不整脈薬は必要ないので、心拍数をコントロールするためにベーター遮断薬やベラパミル、ジコキシンを使用します。血栓塞栓予防薬については発作性や持続性心房細動と同じです。

◎最近の治療

最近では心房細動の研究も進み、多くの治療法が加わってきました。

①カテーテルアブレーション
心房のなかに、静脈や動脈を介して電極を入れ、心房細動の発生部位を高周波通電で焼き、心房細動を起こらなくするという、カテーテルアブレーションが行われています。心房細動の起源(きっかけ)となる部分が主に左の心房に入り込む肺静脈にあることがわかり、肺静脈と心房の間をカテーテルアブレーションで電気的に遮断する肺静脈隔離という方法が一般的です。当初は放射線被爆量が多いことや肺静脈閉塞など重篤な合併症がありましたが、現在では手技の工夫により成績も改善、致死的合併症は0.1%といわれています。
発作性心房細動への成功率は66〜89%と報告されています。一方、心拍数コントロールとして心室結節の通りがよく心拍の早さが非常に早く、薬でどうしてもコントロールできない場合に、カテーテルアブレーションでヒス束を焼き切って完全房室ブロックを人工的に作ることがあります。ただし、心房細動の興奮が心室に伝わらくなるため、ペースメーカーを入れる治療法です。

②メイズ(MAZE)手術
心房細動というのは、心房のいたるところで興奮の旋回が起こります。その旋回を起こりにくくするため心房を手術で小さく切ってしまって、そのあともう一度縫うという手術方法です。
この手術は、開胸して心臓にメスを入れるという、また患者さんにとっても負担の大きい手術です。
わが国では、僧帽弁幕症などの心臓手術をする際に、同時にメーズ手術が行われていますが、心房細動だけに対するメーズ手術はほとんど行われていません。

植え込み型除細動器は、心室細動が起きると自動的に感知して、電気ショックをかけるものと説明しましたが、心房細動も自動的に感知して、心房に電気ショックをかけることができる植え込み型除細動器が開発されています。すでに欧米では、治験の段階に入っています。

◆発作性心房細動はどこまで予防すればいいのか

このように、発作性心房細動に対して、現在さまざまな治療法が開発、研究されてきている段階です。心室細動の場合は、突然死につながるために予防し、発作を止めなければなりません。

しかし、心房細動の発作をどこまで予防するのかは、前述しましたが大きな問題です。

1つは、抗不整脈薬で心房細動を抑え込む治療をする。それでも再発する場合はカテールアブレーションまでおこなう。もう1つは、発作性あるいは持続性心房細動を永続性心房細動に固定してしまい、頻脈にならないようレートコントロール(心拍の速さをコントロールすること)をすることです。そのあとは、血栓の予防をします。発作性心房細動では症状が強く、QOLの低下が激しいのですが、永続性心房細動になると症状がほとんど消滅してしまうことが多いのです。

この2つの選択について、私たち専門家の間でも議論が交わされているところです。

心電図
心房がけいれん状態になるのが心房細動です。心電図では、P波が認められないのが特徴です。心電図の基線(洞調律で示される心電図の基本の線)が揺れているように見えます。これは1分間に350~450回の興奮があるため、形や振幅が一定しない細やかな波形(f波)としてあらわれるのです。QRS波もバラバラで一定していません。したがって、脈もバラバラに感じます。
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