「国民による国民のための医療の実現」の支援を目的とし、国民がインターネット上で見つけやすい医療情報メディア

第四章 それぞれの不整脈の特徴 期外収縮

不整脈の原因には、過労、睡眠不足、精神的または肉体的なストレス、飲酒、喫煙、カフェインの取りすぎなどがある。

この章では、不整脈が気になる人にとって、もっとも関心のあるそれぞれの不整脈の症状、原因、治療、特徴的な心電図について解説していきましょう。

第1章「だれでもわかる不整脈と心電図」でも少しふれましたが、患者さんは、自分の病気についてある程度の知識を持つことが大切です。医者からの一方的な説明を、わからないまま聞くという姿勢ではなく、患者さん自身が自分の病気について勉強して、医者の説明を理解する。それが自分の病気に対して積極的な治療に結びつき、治療の効果を上げることにつながります。そういう意味からも、自分の不整脈について、これから説明することは基本的な知識として、知っておいてほしいと思います。

    期外収縮は、発生する部位によって、次の3つに分けられます。
  • ①心房性期外収縮
  • ②房室接合部性期外収縮
  • ①と②をあわせて、上室性期外収縮とよびます。
  • ③心室性期外収縮
上室性期外収縮
症状

上室性期外収縮は、もっとも多くみられる不整脈のひとつです。

自覚症状がない成人の健康な人でも、24時間のホルター心電図で検査すると、半数以上の人に上室性期外収縮が認められることはすでに述べました。そして、年齢を重ねるにつれて、より多くの人に認められるようになります。

上室性期外収縮で9割以上の人には、特別な症状は出ないことが多いのですが、残り約1割以下の人には症状が出ることがあります。

症状としては、動悸、のどがつまる感じ、脈がとぶ、胸部不快感、などです。また、まれに胸痛、心臓部の圧迫感などを感じることもあります。

原因
過労、睡眠不足、精神的または肉体的なストレス、飲酒、喫煙、カフェインの取りすぎなどがあります。
治療

症状のない人、軽い症状が出ても気にならない人には治療は必要ありません。症状が強く出る人でも、薬による治療は原則的には必要ありません。

その場合は、第3章「不整脈の治療方法」で説明したように、ストレスを解消したり、飲酒をやめたり、ライフスタイルを改善することによって、症状がほとんど消失することが多いからです。

上室性期外収縮は絶対に生命にかかわらない、心配のいらない不整脈であるといっても過言ではありません。しかし、それでも症状が改善されない場合は、次のような薬物療法を行うこともあります。

緊張したときや、運動をしたときに、上室性期外収縮が出る場合には、副作用の少ない精神安定剤やベータ―遮断薬(Ⅱ群薬)を使用することもあります。

まれに、心筋症、弁膜症、心筋梗塞などの、心臓に基礎疾患があり、症状が強く、かつ上室性期外収縮が心房細動などの引き金になる場合には、一時的にⅠ群薬を使うこともあります。

しかし上室性期外収縮自体に対して、抗不整脈薬を長期にわたって投与することはありません。

心電図
洞結節からの命令がリズミカルでなく、P波の形が違うものが、基本のリズムよりも早く出てきます。しかし、P波の形は違うものの、心室には正常に命令が伝わっていますから、QRS波の幅は正常となります。つまり、QRS波の形が正常で、基本のリズムよりも早く出るのが上室性期外収縮の心電図の特徴です。心房性期外収縮の場合は、必ずP波が出ますが、房室接合部期外収縮の場合は、ときとしてP波がみえないこともあるし、QRS波のあとに出ることもあります。
心室性期外収縮
症状

心室から発生した早期収縮を心室性期外収縮といいます。これも、上室性期外収縮と同じように頻度の高い不整脈のひとつです。やはり9割以上の人は自覚症状を持たないことが多く、他の病気や健康診断で検査をしてはじめて、自分に心室性期外収縮があることを知るというケースがあります。

しかし、1割近くの人は、自覚症状を感じることがあっても、その症状は上室性期外収縮と同じような、動悸、脈がとぶ、のどが詰まる感じ、胸部の不快感などになります。

原因

心室性期外収縮の原因は、上室性期外収縮と同じように、過労、睡眠不足、精神的・肉体的なストレス、カフェインの取りすぎ、タバコの吸いすぎ等です。

ただ心室性期外収縮の場合、心筋梗塞や心筋症などの重大な基礎心疾患があるかないかで、その治療に対する考え方が大きく変わってきます。

なぜかというと、基礎心疾患があり、とくに心臓の機能が低下している場合には、心室頻脈や心室細動を誘発し、突然死を起こす可能性があるからです。これについては次の「治療」の項目で説明します。

治療

心室性期外収縮において、重症度の考え方は上室性期外収縮とまったく異なります。上室性期外収縮は心房細動を起こしたとしても突然死には直接結びつきませんが、心室性期外収縮は、頻度はまれであっても、心室頻脈、心室細動の引き金となり、突然死に結びつく可能性があるからです。したがって、まず、こわい心室性期外収縮(悪性心室性期外収縮)か、こわくないものかを、医師が判断することからはじまります。それは次のような事項から総合判断します。

  • ①症状はあるか
    あるとすれば、その内容はどうか。めまいや失神などの重症な症状(アダムス・ストークス症候群と疑わせる症状)のある場合には、心室頻脈や心室細動を起こす「こわい」心室性期外収縮になる可能性があります。
  • ②基礎心疾患、その重症度、心臓の機能はどうか。
    心筋梗塞や拡張型心筋症など、とくに心臓の機能の低下または心不全のある場合には「こわい」心室性期外収縮になります。
  • ③心電図上の波形はどうか。
    後述する「ラウンの分類」(書籍115p)から考えます。
  • ④運動でどうなるか。
    運動でより症状が悪化したり、誘発される場合は、「こわい」心室性期外収縮の可能性があります。
  • ⑤12誘導心電図以外の必要な検査ではどうか

    ホルター心電図、加算平均心電図、体表面電位図、電気生理学的検査、心エコー図、核医学検査、冠動脈造影検査なども必要に応じて実施します。

これらの結果、「こわくない」心室性期外収縮と判断された場合には、ライフスタイルを改善し、日常生活をコントロールすることで、症状はほとんど解消します。それでも動悸などの症状が消えず、日常生活に支障をきたす場合は、精神安定剤やⅡ群薬のベータ―遮断薬、Ⅰ群薬を使うこともあります。

心室細動や心室頻拍を引き起こし、突然死に結びつく「こわい」心室性期外収縮と判断された場合は、Ⅲ群の抗不整脈薬を中心に使用します。

私は講演などで次のように話しています。

ホルター心電図の検査も、運動負荷試験も、心エコー検査も、胸部X線も、どの検査でも心配がない場合は、「この不整脈は、まったく心配のない不整脈です」と、しっかりと保証してあげることが大事です。そうしないと患者さんは「また不整脈が出るのではないか」と不安を持ち、不安がストレスとなり、不整脈がさらに誘発される、といった悪循環をくり返すことがあるからです。

ここで大切なことは、患者の「心のケア」の問題です。医師側の対応としては、次のような態度が大事です。第一に医師は患者の言葉で話された症状や苦痛をよく聞くこと(受容といいます)です。次に、その話から患者をサポートします。話を聞き、診察をし、検査をして、その結果を患者が十分理解できるように説明して、保証してあげることです。こうして、患者と医師の信頼関係が作り上げられる――と私は考えています。

また、医師だけでなく、家族、職場、場合によっては地域など、患者を取り巻く人たちの、患者に対するサポートも重要になります。

ラウン(LOWN)の分類

心室性期外収縮の心電図の波形から重症度を判断するひとつのめやすとして、「ラウンの分類」があります。このラウンの分類について簡単に説明しましょう。

ラウンの分類は、次のようにⅠ~Ⅴに分類されています。

  • Ⅰ.期外収縮の数が1時間に30個以下(頻度が少ない)
  • Ⅱ.期外収縮の数が1時間に30個以上(頻度が多い)。
  • Ⅲ.期外収縮が1か所ではなく、数か所から出ている(多源性)。
  • Ⅳa.期外収縮が2連発で起こる。
  • Ⅳb. 期外収縮が3連発以上続く。
  • Ⅴ.T波の上に期外収縮が重なってくる(RonTといいます)


このうちⅢ、Ⅳ、Ⅴは、心室細動を起こしやすいという意味で。「複雑性期外収縮」や「悪性期外収縮」というよび方をすることがあります。そのなかで、1分間に160回以上の脈拍になるⅣbや、Ⅴの心室性期外収縮の場合には注意が必要となります。

元来、ラウンの分類は、急性心筋梗塞のときに起こる心室性期外収縮の重症度の評価に使われ、クラス2以上は、心室細動に移行しやすい「警告不整脈」ともよばれています。しかし、それ以外の基礎心疾患にどの程度適用されるのかは疑問もありますし、基礎心疾患のない場合には、ラウンの分類がどの程度の意味を持つかは明らかではありません。

したがって、先に述べたように、ラウンの分類をひとつのめやすとして症状や基礎心疾患との総合判断が必要になります。基礎心疾患があり、心臓の機能が低下していて、心室細動による突然死のリスクがある場合、どのような抗不整脈薬を使うかというと、それまでは心室性期外収縮に対してⅠ群薬を使っていましたが、現在では心臓以外の臓器に副作用はあるけれども、アンカロンなどのⅢ群薬を使って、突然死を防ぐ治療を行っています。

このように、心臓の基礎疾患と、心臓の機能によって、心室性期外収縮の重症度の評価は大きく変わってくるのです。

心電図
正常な心臓のリズムに対して、余分に早く興奮が出てきます。その興奮が心室から出るために。P波がないのが特徴です。心室の中では、正常な興奮として伝わらないために、QRS波の形も正常なものとは違って、幅の広い、異常な形をしています。
著者の紹介会社概要お問い合わせ
ページトップへ