不整脈の薬の使い方には、臨床薬理学の考え方が非常に大切です。
かんたんに説明しますと、「薬が体内に入ったあと、どのような運命をたどるのか」、その結果、「体がどのように反応するのか」をみる学問です。
抗不整脈薬は血液中に、ある量がなければ効果がなく、ある量を超えると中毒作用が出てきます。つまり、中毒濃度よりも下で最低有効濃度より上に、薬の血中濃度(有効血中濃度)を維持することが大切です。
抗不整脈薬の有効血中濃度は、他の薬と比べて、その幅がとても狭いことが特徴です。そのためには、体にどのくらい吸収されていくのか、体のなかに入ったあと、排泄される場所は腎臓なのか肝臓なのか、どのくらいの時間で体の中から薬が抜けていくのか、などを十分に知った上で、薬の投与量と投与間隔を決めることになります。
じつは、これらの知識は、薬を服用している患者さんにとっても必要なことです。たとえば、何時間ごとに服用するのか、薬を飲み忘れたらどうするのか、頓服(とんぷく/定期的でなく症状があったときに1回単位で服用すること)するときはどうするか、など薬の種類によって違いがありますから、医師の説明を受け、理解することが必要なのです。
このように、いかに科学的に薬の投与計画を立てるかという学問も急速に進歩してきています。医師の立場からいえば、これらの学問を臨床的に上手に使っていくということも大変重要になってきたわけです。