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第二章 あなたの不整脈はこわい不整脈? 不整脈を自覚するとき

不整脈の症状には、動悸、胸苦しさ、のどの詰まり、めまいなどがあります。

あなたが不整脈を自覚するとしたら、それはどんなときでしょうか。それには、大きく2つの場合が考えられます。1つは自分で何らかの症状を自覚して、病院で心電図をとってもらい、不整脈と診断された場合。もう1つは、健康診断や他の病気で病院などに行った時に心電図をとり、偶然に不整脈が見つかった場合です。

不整脈の症状としてもっとも多いのは、「動悸を感じる」というものです。次に多いのは「胸苦しさ」や「のどが詰まる感じ」です。さらには「めまいを感じる」というケースもあります。

動悸
動悸は、どの程度の症状を自覚し、どういう訴えをするか、個人差が大きいものです。たとえば、単に脈拍が速い、脈が抜ける、あるいは脈が乱れるとか、脈が遅くなる、強く打つなど、人によって訴えがさまざまです。したがって自分が感じる動悸が、具体的にどういうものなのかを、まず知ることが大事です。
(1)運動や緊張で起こる動悸

動悸はだれでも感じるものです。不整脈でなくても起こることがよくあります。興奮したり、運動したりすると、心臓の拍動が強くなる場合などです。

本来は正常に打たれるべき脈が、興奮や運動をすることで速くなるのは、第1章でふれた「洞性頻脈」というもので、洞結節から命令が出て正常に伝導しているものの、興奮や運動により速くなり、それを動悸として感じるわけです。貧血の場合などでも、二次的にこの洞性頻脈が起きることもあります。

不安や緊張で起こる動悸もよくあります。不安、緊張で脈が速くなる、心臓が非常に強く打つなど、動悸としてあらわれてくるのは自律神経のなかの「交感神経」が緊張した結果です。交感神経が緊張すると、交感神経の末端からカテコラミンというホルモンが出ます。また、副腎髄質(ふくじんずいしつ)からもカテコラミンが出ます。

自律神経は、洞結節に脈を速く打つように命令を出します。また、心臓の収縮そのものも強くしますから、その結果として強い拍動を感じるのです。また、交感神経のはたらきによって血圧も上がりますから、動悸を強く感じることになります。

しかし、これは生理的に起こる不整脈です。たとえば、不安や緊張を感じたり、運動をしたりしたときには、生理的に脈拍が1分間120~160回の「洞性頻脈」が起こります。

ところで、不安や緊張や運動で起こる動悸が、すべて「洞性頻脈」で心配はいらないかというと、そうとは言い切れません。多くの場合は「洞性頻脈」ですが、それ以外の重症な頻脈性不整脈でも起こるからです。

以上のように、不安や緊張とひとくちにいっても、人によって感じ方、表れ方は大きく違い、その人のキャラクターや性格など、いろいろな要因が関係してきます。

(2)動悸と不整脈

不安、緊張、運動をきっかけにして、「洞性頻脈」ではなく、発作性の頻拍を起こす人がいます。これを一過性の頻脈として簡単に片づけるわけにはいきません。不整脈そのものを疑う必要があるのです。それは発作性の「心房細動」や「上室性頻拍」あるいは「心室頻拍」などを誘発する恐れがあるからです。

したがって、動悸がどの程度のものか、どういう性質のものかによって、ある程度、不整脈の鑑別をすることができます。たとえば、深呼吸をしたり、横になったりすると、だんだん脈が遅くなって元の状態に戻ってくるというときには「洞性頻脈」のことが多いようです。

ところが突然脈が速くなって、それでポンと止まるというようなときには「発作性頻拍」などで起こることが多いのです。

脈が急に遅くなるときには「徐脈性不整脈」(書籍22p)のこともありますし、「期外収縮」で起こることもあります。脈が遅くなるというのは、「房室ブロック」や「洞不全症候群」などによって心臓の動きが遅くなる場合と、「期外収縮」のように電気的興奮は起こっていても拍動は起こらないで空回りするという状態もあるのです。

ところで、脈が抜ける、あるいは脈を余分に打つという場合もあります。トン、トン、ト、ト、トン、というように脈を余分に打つ場合は「期外収縮」と考えてよいでしょう。ところが、トン、トン、トン、トン・・・トーン、トンというように脈が抜ける場合は、不整脈として2つのケースが考えられます。

第一は「洞房ブロック」、「洞停止」などのように、洞結節から刺激(命令)が突然抜けることや、「房室ブロック」で命令が伝わらないためです。

第二は、期外収縮で空回りしたあとの心臓の動きが強くなるために、それを動悸として訴えるというケースです。

また、まったく不規則に打つのは「心房細動」です。

脈は規則正しいが遅い、という場合は「洞不全症候群」や「房室ブロック」が考えられます。この場合は、心臓の拍動を強く感じる場合もあるし、全身倦怠感を感じる人もあります。

(3)動悸と他の病気の関係

不整脈とは関係なく、他の病気によって動悸が起こる場合もあります。動悸を訴えて診察にみえる患者さんのうち、約5割は精神的なもの、約3割は不整脈からくるもの、残り約2割は他の病気を原因とするもの、という報告もあります。患者さんのなかには狭心症や心不全を起こし、それを胸痛ではなく、動悸として訴える人がまれにあります。

これらの心疾患ではなく、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう/甲状腺からホルモンが過剰に分泌されて起こる病気で、代表的なものにパセドウ病などがある)のように「洞性頻脈」を起こす場合もあります。

不安や緊張がなくても「洞性頻脈」が続くという場合は、この甲状腺機能亢進症や、貧血や高熱をともなう何らかの感染症など、心臓以外の病気が原因となっている場合も考えられます。

胸内苦悶感

胸苦しい、重苦しい、圧迫されるなどの胸部不快感を「胸内苦悶感」とよびますが、そうした症状を訴えてくる人もいます。もちろん、その訴え方や様子は、患者さんによって大きな違いがあります。

のどが詰まる、または空咳が出ると訴える人もいます。特に「期外収縮」があるときには、そう訴えるケースがあります。

のどが詰まる感じ、胸内苦悶感、胸苦しさは、不整脈以外でも起こります。もっとも重要な判断として、狭心症との識別をしなければなりませんし、また心臓病などの識別も必要です。

この心臓神経症は、動悸、胸痛、息切れ、胸部不快感など、心臓の症状を訴える神経症です。心臓の異常を訴えるものの、その原因となる基礎心疾患が認められず、精神的な原因による場合に用いられる疾病の総称です。

もちろん不整脈が起こったために、実際に狭心症を引き起こし、胸内苦悶感や胸痛などを訴えている場合もあります。

めまいと失神発作

「めまい」にも、目の前が暗くなる、真っ白になる、倒れそうになる、フワ~ッと気が遠くなるなど、いろいろな症状が訴えられます。こうした症状はたしかに不整脈でも起こりますが、不整脈以外でも起こることが多いものです。しかも、生理的といいますか、特に病気ではないものでも起こりますし、他の病気で起こるものもあります。

不整脈で起こるめまい発作というのは、非常に危険な兆候といえます。なぜかというと、不整脈によって起こるめまいは、心臓から出る血液の量が減るか、一定時間血液が送り出されないために、脳に血液が十分に届かない脳虚血(のうきょけつ)状態が起こっているからです。

この脳虚血状態としてのめまい発作、それに続く失神発作などが起こる場合は、たいへん危険な状況です。これが2~3分以上続いてしまうと、脳細胞はもとに戻ることなく、死に至ることになるからです。

また、不整脈で起こる失神発作には、4つのパターンがあります。

  • ①突然、意識がなくなり、その後回復する(意識喪失の前後に動悸をともなわない)。
  • ②動悸が起こったあと、意識をなくす。
  • ③動悸が起こり、それが止まるときに意識をなくす。
  • ④意識がなくなり、回復したあとに動悸がある。


不整脈で起こる失神発作では、意識が回復したあと、知覚や運動などに異常がないのが特徴です。

(1)不整脈から起こるめまい、失神発作は危険

脳虚血症状の程度は、不整脈の種類によっても違います。また、同じ人物でも、寝ているとき、座っているとき、立っているときでは違います。あるいは若者と高齢者でも違いが出てきます。このような不整脈による脳虚血症状としてのめまいと失神発作を「アダムス・ストークス発作」とよび、病名は「アダムス・ストークス症候群」となります。

アダムス・ストークス発作を起こす不整脈には、次の3つのタイプがあります。

  • ①徐脈型/もっともこわいものは「心室停止」です。その原因になるのが「洞不全症候群」、「房室ブロック」などです。これについては第4章で詳しく説明します。
  • ②頻脈型/突然死の引き金になる「心室細動」があります。また「心室頻拍」、「発作性上室頻拍」、「心房粗動」、「心房細動」などがあります。
  • ③徐脈・頻脈型/①と②の両方が見られるものです。発作性心房細動をともなう「洞不全症候群」や、心室頻拍をともなう「高度房室ブロック」(書籍176p)などがあります。
(2)不整脈以外のめまい・失神発作

もっとも多いのは「立ちくらみ」です。急に立ち上がったために血圧が降下し、フワ~ッとするケースですが、これは低血圧の人ならよくあることです。

「メニエール症候群」では、なんの前ぶれもなく突然激しいめまいが起こりますが、その場合は「天井がまわる」という回転性のめまいで、耳鳴りや吐き気をともなうことが多いことが特徴です。

一過性の脳血管障害で起こるめまいや失神もあります。

また、不整脈以外で起こる失神発作でもっとも多いのは、迷走神経反射性(めいそうしんけいはんしゃせい)の失神発作です。これは、痛みや強度の精神的ストレスなどで、副交感神経の亢進が起こり、徐脈となり、血圧が下がって失神発作を起こすものです。

全体倦怠感

他に不整脈で起こる症状としては、全身倦怠感があります。これは、とにかく疲れやすい状態になります。なぜ全身倦怠感が起きるのでしょうか。

心臓が活発に活動して全身を動かすためには、体中の筋肉に血液が十分に送り出されなければなりません。体中の筋肉に送り出される血液の量は、心臓が1回に送り出す血液の量と、1分間に心臓が動く回数で決まります。

したがって、運動したときには脈が速くなり、さらに心臓が動く回数も増えるので、1分間に送り出される血液の量は増えることになります。

ところが、脈が遅い不整脈のある場合には、運動しても脈が多くならないため、全身に血液の必要量が行き渡らず、その結果として息切れなどを引き起こし、全身倦怠感や疲労を訴えることになるわけです。

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