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第一章だれにでもわかる不整脈と心電図 拍動−それは生命の神秘

拍動は心臓の動きの仕組みです。

それでは、心臓が規則正しく収縮と拡張をくり返すためのしくみについて考えてみましょう。普通、安静にしているときの成人の心臓は1分間に60~100回、1日約10万回の規則的な動きをくり返します。これを拍動(はくどう/いわゆる心臓の鼓動や脈として感じる状態)といいます。

拍動は、運動をしたときや驚いたときには速くなり、寝ているときや安静にしているときには遅くなるという規則性を持っています。これを「正常洞調律」(せいじょうどうちょうりつ)といいます。人間の体は、誕生してから亡くなるまで心臓の拍動をくり返すのですから、生命の神秘を感じずにはいられません。

ここでは図を参考にしながら、生命の神秘ともいえる拍動、正常洞調律のメカニズムをご説明しようと思います。すこしむずかしいと感じられるかもしれませんが、このホームページで不整脈について理解していただくためには欠かせない事柄ですから、はじめによく知っておきましょう。

心臓の筋肉は、2種類に分けられます。1つは心臓に「動け」という命令(電気的興奮)を作り、それを伝える筋肉で「特殊刺激伝導系」(とくしゅしげきでんどうけい)、もう1つは、その命令を受けて収縮する筋肉で「作業心筋」(さぎょうしんきん)とよばれています。

心臓の拍動のリズムは、この「特殊刺激伝導系」という命令系統によって調節されています。右心房の上部に「洞結節」という特殊な心筋細胞の集まりがあり、そこから心臓に「動け」という命令(電気的興奮)が1分間に60~100回出されます。その「動け」という命令が、心房の上から下に向かう「結節間路」(けっせつかんろ)という心筋を通って伝えられます。

そして、電気的興奮は心房から心室へ向かい、「房室結節」(ぼうしつけっせつ)という特殊な心筋細胞の集まりの部分を通り、その下の「ヒス束」(ひすそく)というところに伝わります。そこから下の部屋の心室は、右心室に向かう「右脚」(うきゃく)と、左心室に向かう「左脚」(さきゃく)に分かれます。さらに左脚は、体の前方に行く前枝(ぜんし)と、後方に行く後枝(こうし)という枝に分かれます。

ということで、心臓の下の部屋つまり心室には、右脚と、左脚の前枝と後枝から全体に命令が伝わることになります。さらにその右脚と左脚は、最終的には特殊な心筋細胞がネットワーク状になっている「プルキンエ繊維」を通して作業心筋に命令を伝えることになります。その命令が作業心筋に伝わると、作業心筋が電気的に興奮し、次いで収縮という現象を起こします。

前述したように刺激伝導系というのは、通常、洞結節から1分間に60~100回の命令を出しています。その命令は房室結節からヒス束へ、そして右脚と左脚へ、最終的にはプルキンエ線維へ伝わっていくわけです。しかし、もし洞結節から命令が出ない場合には、洞結節以下の刺激伝導系も、それよりも遅いスピードで、自分で命令を出すことができる能力を持っています。これが「自動能」(じどうのう)とよばれるものです。

以上のように刺激伝導系が正常に動作していることを、前述したように、正常洞調律といいます。この正常洞調律というのは、言いかえれば、次の3つの条件を満たすことが必要になります。

  • (1) 心臓を動かす命令が洞結節から出ていること。
  • (2) 刺激伝導系を、早くもなく遅くもなく、正常に命令が伝わっていくこと。
  • (3) 洞結節から出る命令が1分間に60~100回であること。


以上の説明で、脈が規則正しく打たれる理由が、おわかりいただけたのではないでしょうか。

この正常洞調律以外の心臓のリズムすべてを、不整脈といいます。したがって不整脈というのは、単に脈が速くなったり、遅くなったり、乱れたりすることだけでなく、心臓が規則正しく動いている場合でも、刺激伝導系に異常がある場合は不整脈ということになるのです。

コラム 脈が昼は早く、夜は遅いわけ

洞結節は、交感神経と副交感神経というまったく正反対の作用をもっている自律神経によってコントロールされています。

昼間は交感神経が強く作用し、それによって心拍は速くなります。反対に夜間は副交感神経が強くなり、交感神経は弱くなり、心拍は遅くなります。このように自律神経によって心拍は24時間のリズム(生体リズム)を持つことになります。

運動や興奮により、交感神経がさらに強く作用すると、その結果、心拍はさらに速くなります。

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